第六章



「あのなぁぁ……」

ラディスはばっと起き上がった。

「他にやり方があるだろ!」

見れば、彼の額には弁当に唯一残っていた梅干しが。勢いよく張り倒すものだからそれでくっ付いてしまったらしい。間もなく、それはぽろりと落ちて。

「仕方ないじゃないか」

未だ苦しそうなカービィの背中を摩ってやりながら、マルス。

「あれが普通のドアなら、ドアノブを捻る音で気付くんだけどなあ」
「兎にも角にも。見られなくてよかったじゃないですか」

ラディスは頬杖を付いて梅干しを見つめていたが。

やがて、小さく溜め息を吐き出した。

「こんなので本当に大丈夫かなぁ……」


――遡ること、二日前。

「依頼?」

夜、ラディスはマスターの部屋に呼び出されていた。

「ああ」

マスターはいつものように厚みのある椅子に腰を下ろし、パソコンのキーボードを片手で操作しながら空いた手で一枚の紙を机の上に差し出す。


依頼人は地上界にあるラグナという町に住む、警備員の男。

その内容は実に興味深いものだった。何でも“死神”とやらが小さな子供をターゲットに、何処かへ連れ去ってしまうという事件が多発しているらしい。

今のところ、例えば連れ去られた子供が完全に行方知れずになってしまったりといった最悪の事態にまでは陥っていないようだが、案の定町の住人たちの不安は募るばかり。退治しようにも死神は不可思議な力で対抗し、全く歯が立たない。

そこで自分たちに今回依頼を申し込んだ、というわけである。
 
 
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