第六章
――ここはヒーロー達が控えているテント。
「えー、午前の部お疲れ様です。昼食の方は此方で用意させていただきましたので、そちらをいただきながら休憩をとっていただければと思います」
スタッフの男は白い紙を片手に話して。
「……それからイエローさん」
「はいっ」
「台詞を全暗記するのは感心ですが、一応レッドさんの台詞ですので」
「す、すみません……」
申し訳なさそうに視線を落とすイエロー。
「後は特に問題ないと思います。僕はこのテントのすぐ外の方にいますので、何かあれば言ってみてください。トイレの際もなるべくなら、僕かスタッフの方に声をかけていただいて。他のお客さんに見つかると、特に子供はまずいので……」
話を終えたスタッフの男がようやくテントを後にすれば、五人は揃って溜め込んだ息を吐き出した。その内の一人、イエローと呼ばれていた男はぽつりと呟く。
「分からないものだな……」
白を基調にそれぞれの名前に合った色のラインが入ったスーツ。ブーツ、肘丈のグローブ。コードレスのヘッドフォンにはちょうど目をすっぽりと覆うほどの四角い、黒のアイガードが取り付けられており、これだけはどういった造りなのかヘッドフォンの向かって左の耳当てに付いているボタンを押すと収納が可能だ。
イエローはヘッドフォンを外す。――単なる一般人かと思われていたその男は、なんとラディスだったのだ。続けて四人がヘッドフォンを外していくと。レッドはマリオ、ブルーはマルス、ピンクはカービィ、グリーンはリンクと豪華勢揃い。
「あのなぁラディス。イエローの設定忘れてないか?」
「へっ?」
「引っ込み思案! すぐに諦めようとするネガティブタイプ!」
「全くといっていいほど噛み合っていませんね」
リンクは呆れたようにテーブルに頬杖を付く。