第六章
そう、これはとある町の広場で行われているヒーローショー。
掛け声と共に五人がビシッとポーズを決めれば客席の所々でくすくすと笑う声もあったが、子供たちのはしゃぐ声に掻き消された。まあ、いくら決めポーズがかっこ悪くても子供たちの目にはヒーローということで補正がかかっているのだ。
「ちょ、昨日も思ったんだけど煙多すぎっしょ……」
単なる仕掛けとはいえ、黒煙が風に流れてくれば五人はそれぞれ咳き込んで。
「現れたな、バトレンジャー!」
黒服の男とは今回のショーでの敵役。マントを羽織り、顔を覆い隠すようにして赤の模様が入った黒い仮面。そしてお馴染み、司会のお姉さんを捕らえている。
「ドクドクロ団団長、クロガネ! その人を離すんだ!」
「いやそれ俺の台詞だから」
踏み出して黒服の男を指差すイエローにレッド、突っ込み。
「そ、そうだっけ」
「ええいごちゃごちゃと! ドクドクロ! 奴らをコテンパンにしてやれ!」
黒服の男が命令すると、ステージの端から濃い紫色に白の骸骨の模様を自身の骨格に沿って描かれた全身タイツを着込んだ男が十数人ほど出てきた。案外ステージには余裕があるので、狭くて戦いにくいなんてことはないのだ。
「そう簡単にやられて……」
「せぇいっ!」
「仕事早すぎるだろ!」
戦闘開始早々、雑魚敵ドクドクロに飛び蹴りをかますイエロー。
「戦場を駆けろ! 轟け雷撃! サンダービースト!」
「ぐわあああっ!」
「大人気ないですね、初っ端から必殺技とか」
「ま、いいんじゃないの。エンターテイメントですし」
次々とリーダーのレッドよりも積極的に攻撃を仕掛けていくイエローに、剣を薙ぎながらグリーン。拳を振るって振り返り、ピンク。
「頑張ってぇー!」
子供たちも大はしゃぎ。
……はてさて。今回の物語には主要人物が一人も登場しないのかというとそうでもない。実はいうと既に冒頭からご活躍中だったりするのだ。
読者の皆様にはお分かりいただけただろうか。