第一章



「きゃああぁあ!」

ちょうど川辺を通りかかったその時だった。一人の女性の悲鳴を耳にしてラディスは立ち止まり、そちらへと目を向ける。

「まっ……ま、ママー……!」

見れば、まだ幼い子供が川に流されていくではないか。この辺りの流れは急だから危ないというのに、川辺で遊んでいて足を滑らせてしまったということか。

「っと」

こうしてはいられない。流れていく子供を川沿いに追いかけながらジャケットを脱ぎ捨て、川に飛び込む。

その時、偶然そこを通りかかった青年が脱ぎ捨てられたジャケットを拾い上げて。

「ぷはっ……っ坊や、掴まって!」

水面に顔を出して息を吐き出し、クロールで子供に近付いて腕に抱える。水を掻き分けながら、川辺へと着実に向かって。
 
 
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