第五章



……へ?

「ちょっ、」

マルスの言い分も聞かず、ラディスは勢いよく扉を閉める。

続いて鍵もかけられ、文字通り閉め出されてしまった。暫しぽかんとしていた二人だったが、雨に打たれれば当然身も冷えるのでひと足先にマルスがくしゃみ。

「何を考えてるのさあの馬鹿!」

叫び声が悲しく木霊する。カービィはふとぬかるんだ地面を見遣って。

「アリティア国王子であるこの僕が、どうしてこんな」
「マルスさーん」
「何っ」


べちゃ、と音を立てて。振り返った途端、顔面に泥だんごが命中。


「うちのリーダー、融通がきかないもんで」

カービィは次の泥だんごを手にふふんと意地悪く笑ってみせる。

「男なら拳で語り合えってとこなんでしょうけど。残念ながら言葉が通じる相手でもないんで殴るだけ無駄かなー、なぁんて――ッぶふ!?」

次に泥だんごをカービィの顔面に命中させたのはマルスだった。

「……上等」

マルスは頬に青筋を浮かべていて。

「ちょうど君の顔に飽き飽きしていたところなんだ。似合うよ、その顔」
「……ああそう」

カービィはにっこり。しかし口角がひくひくと引き攣って。

「じゃあ王子様も」

泥だんごを構え、勢いよく投球。

「綺麗におめかししてあげないとねえ!?」
 
 
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