第五章
ラディスの叫び声が、廊下に響き渡る。
マルスとカービィは剣を交えて睨み合っていたが、ようやくその耳に声が届いたのか押し合う力を緩めては目を丸くして声の主に注目した。
「……ユウ!」
ラディスがそう呼ぶと、二人が構えていた剣は手元を離れてふわりと宙に浮かび上がり、集団から少し離れた場所で様子を見守っていたユウの元へ。
「こっちに来い」
そうして二人が呆気にとられている隙にラディスはそれぞれカービィの左手とマルスの右手を掴み、歩きだす。マルスはきっと睨みつけて。
「離してくれ! 君には関係」
「いいから来い!」
ラディスはぴしゃりと言い返す。
「全く……どうして最近は喧嘩といったら危害を加えることしかできないんだ! 俺が子供の時は投げても振り回しても相手に怪我だけはさせなかったぞ!」
「そうかっかするなって……な?」
「外野は黙ってろ!」
ついてきていたフォックスが宥めるも、これである。
「君の価値観を押し付けないでよ! それにこれは僕たちの」
「僕たちの、があるか! チームの問題はリーダーの責任なんだ!」
ラディスは二人を連れてエントランスホールへ。……ところが、広い場所に出たからと解放するでもなく、着実に玄関へと向かっている。遅れてやって来たロイもラディスに引きずられていく二人の姿を見つけると目を丸くし、急いで駆け寄ろうとしたが、目の前に飛び出してきたリムがぱっと両手を広げると立ち塞がって。
「いいから離してくれ! 君の説教なんか聞きたくない!」
ラディスは玄関の扉の前で立ち止まる。
「……だったら」
だん、と扉を蹴り破り、二人を降りしきる雨の中放り出して。
「雨にでも打たれて反省しなさい!」