第五章
駆け出したマルスが右上から左下へ斜めに剣を斬り下ろせば、対するカービィは右下から左上への斜めの斬り上げで攻撃を弾いた。再び互いの剣を交え、暫しぎりぎりと押し合った後マルスが一旦剣を引き、その隙に薙ぎ払い。
カービィはそれを後方に飛び退くことで躱したが、すぐにマルスは距離を詰めて突きを何度か繰り出してきた。ひらりひらりと舞うように躱し、最後、回し蹴りを仕掛ければマルスは飛び退き、更にバク転を駆使して後方へ、距離を取る。
「今日はまた随分と必死じゃない」
くすっと笑って、カービィ。
「何かあったのかな?」
苛立ち――マルスは顔を顰め、駆け出す。
「お前なんかに何が分かる!」
あの日全てを失った僕は、君だけが唯一にして無二だった。
だけど、だからこそ。君を僕の我が儘に縛り付けるのが嫌で。いつだって手放す覚悟はあったはずなのに。――僕は、僕のやり方で。
それなのに。
嫌だよ。こんなんじゃ割り切れないよ――
「あはっ、」
カービィは再び剣で受け止めて交え、そして、弾く。
「それって本当は分かってもらいたい奴の決まり文句だよ?」
その頃。食堂のすぐ外でそんなことが起こっているとは知る由もなく。
「帰りたい」
テーブルの上にぐたっと伏せて陰湿なオーラを纏い、嘆くのはラディスである。
「……もう。やめてちょうだい、子供みたいに」
「違う。癒しが欲しいんだ……」
サムスは小さく溜め息。その様子を眺めていたフォックスとファルコは。
「意外とメンタル弱かったんだな」
「その割にはしっかり完食してっけどな」