第五章



――マルス。

今ならまだ間に合う。頼む、間に合ってくれ!

ロイはクレシスの元を離れると同時に駆け出していた。クレシスははあ、と息をついてその背中を見つめる。それから天井を仰ぎ、小さく呟いた。

「青春してんなぁ……」


マルスは食堂まで駆けってくると少しだけ息を弾ませ、扉を睨みつけた。

――目的はただひとつ。それがどういった結果を招くのか、後々のことなど今のマルスの頭には全く入っていなかった。最後、息をついてドアノブに触れようとしたその時、すぐ近くまで迫っていた気配にはっと振り返って素早く飛び退く。

「――あんたの考えは全部お見通し」

跳躍からの剣の振り下ろしを繰り出したのはカービィ。剣を軽く振るって、

「でもさ。それって浅はかだよ?」

マルスは迷わず剣を抜き、構えた。カービィはやれやれと溜め息。

「させるわけがないじゃない。さっさと諦めて――」


剣と剣がぶつかり合う。金属の音、高らかに。


「……へえ。案外本気だったんだ?」

カービィは口元に、笑み。

「この僕が嘘をつくとでも?」
「まさか。あんたが嫌いなそれを進んで演じるはずがない」

剣、互いに弾いて後方に飛び退く。

「……正解」
 
 
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