第五章
どうしよう。俺は、どうすればいい。
「あっれぇー? 隣の部屋にいたんだぁ、偶然だねぇー?」
わざとらしく声を上げるカービィは、ロイが余計な口を挟まないようにとしっかり口を塞いで徹底していた。ああ……今度は俺が騙されたんだ。
そして、失う。罪の重圧と引き換えに、最愛の友との縁(えにし)を。
――それだけは、絶対に。
「っマルス! 話を聞いてくれ!」
ロイはカービィを突き放して壁際を向き、手を置く。
「俺は、確かにお前に嘘をついた。でもそれは」
「五月蝿い!」
どん、と拳を握った後ろ手で壁を殴り付けた音。
「……許されると思ってるのかい」
マルスは固く拳を握り締める。
「あの男を許し続けた結果、国は滅び、多くの人々が犠牲になった。あの惨劇を、まさか忘れたわけじゃないだろう。それも共犯者である、君が」
「違う! 俺だってあいつを信じて」
「いい加減にしないか!」
ロイは思わず口を閉ざす。
「……そうやって言い訳したところで、償いきれる罪なんかじゃないってこと……君だって、分かっていたはずだろ。もう……遅いんだ」
――それでも。僕には君が裁けない。
「今更、何も変わりはしない……僕は今まで通り、僕自身のやり方で根源となり得る者をこの手で絶つだけ。その為には、ロイ。君もよく知っているだろう?」
マルスは握っていた拳を緩め、ゆっくりと開く。
「誰かが傷付くことになったとしても」
決して、手段は選ばない――