第五章



「可哀想に」

はっと目を開いた。次の瞬間、カービィは膝を付いてロイを抱き締めていたのである。なのに、心臓がどくどくと鳴っていて、落ち着かない。

それは安心とは程遠い、胸騒ぎに近いものだった。

「簡単に出来ることじゃないよ。その罪の重さを知らないわけじゃないんでしょ」

どくん、どくん。ロイは何故かぴくりとも動けずにいた。

「相応の覚悟がなくては背負えるはずもない。それは決して偽善ではなく。あんたがどれだけあの王子様を想っていたのか、今は痛いほど分かる」

だから、とカービィは静かに言葉を紡いだ。


「今日までお疲れ様」


ぎくっとした。ここからでは奴の表情が窺えない。けれど何故か、それはまるで悪魔のように。にやり、ほくそ笑んでいるような気がして。

「……どういう意味だよ」

不安じゃない、恐怖が募っていく。焦り。ロイは続け様に口を開いた。

「ちゃんと聞いて、」
「ロイ」


音が、止んだ。


「……マ、ルス?」
「さっきの話。あれは本当なのかい」

言葉が喉に詰まって、声が出ない。壁の向こう側でマルスは目を細めた。

「……そう」
 
 
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