第五章
大好きだった家臣たち、両親でさえも失った。その亡骸が眠る墓の前で静かに立ち尽くす一人の少年の背中を、後ろからただ黙って見つめるしかなくて。
――お前は絶対、真実を口にするな。
父、エリウッドは息子であるロイを力強く抱き締めた。
何も知らなかった。聞かれてもそう突き通せ。
嘘とは。必ずしも人を傷付ける為にあるわけではない。それがその人間の為になることもある……王子は、ああなってしまってはもう恐らく誰も信用できないだろう。だからお前が彼の全てを肯定し、受け入れなさい。
忘れるなよ、ロイ。そうでなくては彼も、何もかも全て壊れてしまう。
これは、その為の嘘だということを。
「どんなに正しくなくても、あいつの行動が誰かを傷付けることになっても。それでも、俺があいつを責める道理はねえよ。あいつは、ただ必死なんだ」
――分かるだろ、ロイ。
あの時と同じ惨劇が二度と繰り返されてはいけないんだ。だから、それが嘘だと気付かされる前にこの手で絶つ。……別に、後々のことが怖いとかはないさ。
亡き愛すべき者たちの為。僕は何度だって――……
「あんたは、あいつを否定しないことで罪を償ってたつもりなの?」
「……そうかもしんねえ」
ロイは自嘲気味に笑って視線を落とす。