第五章
どうして、彼はそこまで言って退けるのだろう。
理由は単純だ。――彼にも闇がある。かつての自分と同じ。過去に深く傷付いて、絶望して、怒りと哀しみ、後悔が入り混じった感情に苛まれている。
……だけど。
「ふぅん」
僕たちは“彼”じゃない。
「で?」
マルスは眉を顰めた。
「それが僕たちの為になるとでも?」
カービィははあ、とわざとらしく息を吐き出して。
「あんたが言いたいのはこう。いくら傷を癒してくれたってそこまで親切な人間がいるわけがない。騙されて泣く羽目になる前にそいつを信用するのはやめておけ」
今度はマルスが口を閉ざす。
「分かるよ、あんたの言い分は。確かにそう。でもね、僕らが信じてるそいつは絶対にそんなことしない。確信してるんだ。もちろん僕だけじゃない、皆が」
カービィは右手の甲を腰に宛てて右足に重心を取った。
「詰まる所さ。迷惑なんだよ。あんたの親切がお節介ってわけ」
ロイは密かに握られたマルスの拳を見て。そろそろかな、なんて悟る。
「……どうして」
不意にこぼれたそれに、カービィは眉を顰めた。