第五章
一国の王子としては人生で初のお呼び出しだろう。
「……これはこれは」
だから、ではないだろうが。マルスはあからさまに機嫌が悪かった。
「皆さんお揃いで」
ここは屋敷で最も静かであろう場所、裏庭。
呼び出したのはカービィだが、そこにはマリオに始まってルイージやフォックス、リンク、そしてあの時植木鉢の墜落を阻止したユウが待機していた。
「それで。僕に話というのは」
「いい加減にしなよ」
カービィは率直に話を切り出す。
「まさか、意味が分からないとか言わないよね」
微かだが殺気を感じる。その怒りは未だ頂点に達してないのだろうが、……さて。マルスは付き添いのロイをちらりと横目で見遣って、視線を戻した。
「……何が不服なんだい」
はっと嘲笑。
「君たちこそ。一度優しく愛でられたからってごろごろと喉を鳴らし擦り付いちゃって。全く哀れだよ。疑いもしないで。捨てられた仔猫のように従順で」
マルスは腕を組んで吐き捨てる。
「時が経てば棄てられるとも知らずに」
カービィは目を細めた。が、自制を利かせているのだ。あの時みたいに、箍が外れてはいけないと。マルスは誰も黙っているのをいいことに、続ける。
「彼に限った話じゃない、皆がそう。真に“イイヒト”なんてこの世にいるわけがない。皆、心に闇を抱えている。――隠してるんだよ、騙してる!」
悪魔のように。ニィ、と口角を吊り上げて。
「いつかそれで人を殺して、自分が笑うためにね」