第五章



次の瞬間、マルスははっと目を開いた。

何事もなく通り過ぎていくラディス。音もなく。……当然だ。植木鉢は彼らの頭上でぴたりと静止してしまっていたのだから。ふと、ラディスの傍らの少年。

ユウがゆっくりと顔を上げた。瞳は――妖しく金色の光を宿して。

「っ……」

思わず息を呑む。彼が、超能力を使って植木鉢を空中に留めたのだ。

「……ユウ?」

気付いたラディスが振り返り、声をかけた。ユウが一度瞼を閉じてそれから開くと、瞳は元の紫色に戻っていて。途端、糸が切れたかのように墜落する植木鉢。

「何でもない」

そう言った彼の後ろで、植木鉢が派手に音を立てて割れた。


――次の日。

「っ、」

食堂に響き渡ったのはテーブルを平手で叩く音。犯人はカービィである。

「……何?」

そのテーブルを前に食事をとっていたマルスはじろりと視線を上げて。

「ちょっと話があるんだけど」
「ここですればいいじゃないか」
「王子様にも分かりやすく言ったげる……」

刹那、カービィは影を差して睨みつけながら、

「表に出ろ」
 
 
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