第五章
次の日も、その次の日も。
マルスは執拗に嫌がらせを仕掛けてきた。日数が経てば経つほど、嫌がらせはエスカレートしていく。まさか身の危険を伴う程ではないが、時にはその場に居合わせた全員が思わずぞっとするような嫌がらせが仕掛けられていたりするのだ。
彼も内心焦っているのだろう。ここまで長持ちした人はいなかっただろうから。
「お、おい……」
「今更」
ロイは遠慮がちに伸ばした手をぴくっと震わせて。
「……やめろだなんて、言わないよね?」
マルスは二人の部屋にいた。
窓から下を覗き込むと、屋敷の塀との間に少し狭い通りがある。この通りが裏庭へと続いているのだ。そこへ、表側の庭からやって来たのはラディスとユウ。
「あそこの日向は気持ちがいいぞ! 夢を見るのも忘れて眠ってしまうんだ」
「夢を見るかどうかは選べないと思うが」
マルスはにやりと笑って足下に置いていた植木鉢を手に取った。それを窓から落としてラディスにぶつけようというのだ。もし、それが当たらなかったら?……構わない。それで、彼を精神的に追い詰めることができて。
その結果、この部隊から手を引いてくれるというのなら――
「呆れた男だな。もっと他にするべきことがあるだろう」
「うっ……ユウは痛いところを突くな」
あと少し。あと少し。
気付かれないよう窓から顔を出して、その距離を確かめながら。
……一人は皆の為に、って言うだろう?
男がその地点に差し掛かった時、少年は口角を吊り上げた。程なくして、手放された植木鉢は音もなく、墜落する。何も知らない男の頭を目掛けて――