第五章



なんて大袈裟なこと思っても、やってることは幼稚なんだよな。

あいつには悪いけど少し呆れて苦笑い。こんなことして、本当に辞めちまうもんかねぇ。ま、確かにそれで辞めた奴が何人かいたにはいたんだけどさー……

ロイはラディスの部屋の前に来ていた。扉を数回ノックして、即座にその場を離れる。階段が近いので、その影に隠れれば後は見張るだけ。これを夜中の内に何度も繰り返す。これといった制限はない。自分が限界を感じるまでだ。

これについてはマルスと交代でやっていた。そうでもしなければどちらかの体力が持たないからだ。こうも必死なのかって知られたら笑いものだけどな、ほんと。


「……あれ」

ところが、いつまで経ってもラディスは出てこない。時間的に見ても寝付いた頃だろうし、すぐに起きてくるはずだが……まさか、対策をとられたとか?

確かにそろそろ対策されてもおかしくない嫌がらせではあるが……ロイは不思議に思って階段の影から出てくると、ラディスの部屋の前へ。罠の可能性も踏まえ、警戒して辺りに目を走らせつつドアノブを捻る。引くと、思ってたよりも素直に扉は開いた。

……いない。部屋の何処かに隠れているような様子もないし、ということはまだ部屋に戻っていないのか? トイレとか、バトルルームとか。

「あー……」

そう考え始めると急に怠くなってきた。

ロイは面倒臭そうに頭の後ろをがしがしと掻いて声を洩らすと、暫し立ち尽くした後にその場を離れた。とりあえず、何処かで時間を潰そう。

そうだ、食堂がいいな。鉢合わせは避けたいし、あそこなら今の時間に立ち寄っても不自然じゃない。そう思って、ロイは階段を降りた。目指すは、食堂。
 
 
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