第五章
「あー、死ぬかと思った……」
「クレシスは相変わらず容赦がないな……」
ようやく浴場から出てきたカービィとラディスは逆上せたかのように揃って顔が赤かった。それというのも、クレシスが二人を湯船に沈めたからなのだが。
「けっ。甘やかしてたまるか」
「なにそれひっど。こっち年上なんですけどー?」
少しは敬ってよ、とカービィは唇を尖らせる。
「年上? 若いナリしてジジイだろうが。一生ぼやいてろ」
「ちょっと!」
容赦ない言葉の数々に、カービィも思わず声を上げた。いくら何でも今みたいな物言いは初めてだったのだろう。クレシスも、よくもまあぐさぐさと。それでよく今まで無事生きてこれたものだ。苦笑いを浮かべてラディスは着替えを置いた棚の前へ。
「人間と同じ数えをしたらだよ!? これでも一応、若いし!」
「ほおー、若いってなら敬ってもらおうじゃねえか……ボウヤ?」
「はっはーん……?」
ああ、クレシスも楽しんでいるな。
タオル一枚を腰に巻いて睨み合う二人を、くすくすと笑っているのはラディスだけではない。とはいえ、ただじっと眺めているのでは体が冷えてしまうのでタオルで水滴を拭いながら、だが。ラディスはタオルを首に掛けると、寝巻きを手に取った。
「……え?」
隣で着替えていたドンキーは見上げて、ぎょっとした。
「なんやそれ!?」
そう声を上げるものだからラディスはびくっと肩を跳ねさせて寝巻きを隠そうとしたが、遅かった。近くにいたファルコがすかさず取り上げたのだ。
ばさっと広げられたそれは、
「……ひでぇな」
ナイフのようなものでずたずたに切り裂かれていて。