第五章
さて、どうしたものか。
ああしてマルスに突き落とされてしまったが、正直こういったパターンに慣れてしまっていたのだ。ラディスは暫し腕を組んだまま墜落していたが、そろそろ頃合いかと地面に向き合うと、片手を突き出して青い稲妻を放った。
落下速度が緩やかに変わり、間もなく稲妻が切れて地面が目の前にまで迫ると、今度は両手を突き出して地面に手を付き、前転をして華麗に着地。
……うーん、拍手が欲しい。
「あ、そうだ」
こういう時に無線が便利なんだよな!
ラディスは一人で手のひらの上にぽんと拳を置くと、ジャケットのポケットに手を突っ込んだ。が、笑顔で硬直。直後にがくんと地面に手を付いて。
「阿呆だ……」
残念ながら今更である。
リーダーが無線機を忘れてどうするんだよ! って、そういえば酷く寝不足で朝は意識が朦朧としていたんだっけか。や、それにしても常備はするべきだろ。
「……、」
落ち込んでいたってどうにもならない。ラディスは立ち上がると、ぐるりと辺りを見回した。自分がどの辺に落ちたかは知らないが、ここは森の中。今回の任務のターゲットである気性の荒い魔物とやらがいつ飛び出してくるかも分からないのだ。
そうと決まれば、一刻も早くここを離れてメンバーと合流を――
「よお。ご無沙汰だな」
「ぎゃー!?」
ラディスに声をかけた青年はその反応に思わずにやりと笑った。
「相変わらずイイ声で鳴きやがる」
こうしてラディスが声を上げてしまうのも無理もない。
一本の木の太い枝の上に腰を下ろし、足を組んで見下ろす歪んだ笑みが印象的なこの青年。……目を凝らして見るまでもない。彼はダークリンクだったのである。