第五章
ようやく痛みが引いたらしいラディス、ゆっくりと立ち上がって。
「目的地の森までそう遠くない。歩いていこうか」
「ラディス、頭……」
そう指摘されてしまうのも無理はない。彼の頭は何故かぼさぼさである。
「さっき、放電したろ。体が自然と空気中の電気を拾い集めてんだよ」
つまり静電気か。今のラディスに触れば二の舞だろうな。
「はあ? 僕というものがありながら歩くの?」
この人は。
朝からとことん嫌がらせを仕掛けてくる。門に向かって歩き出していたラディスはぴたりと止まって固まった。顔は、……どうしようと言わんばかりである。
「歩くのが嫌なら這いつくばってれば?」
カービィは頭の後ろに両腕を回しながらぽつり。
「君……僕が誰なのかまだ分からないのかな」
「傲慢な貴族さま」
「斬首」
「よ、よせってマルス!」
剣の柄を掴んで引き抜こうとするマルスを、ロイが慌てて止める。
確かに、相手は王子だ。敬意を払わなければとは思う。でも、それにしたって歩いて三十分程度の距離に車を使うのはちょっと。フォックス達にアーウィンを出してもらってもいいが、あの翼に生身で乗ることはいくら王子でも断固拒否だろう。
「騒々しい奴らだ」
そう言ったガノンドロフに視線が飛んだ。
「……この姿で街を歩いてやるつもりはない。故に手は打っておいた」