第五章
所変わって、ここは食堂。
「じゃ、任せたよ」
自分の分の朝食を乗せたお盆を手に、マルスはにこりと笑って受取口から離れる。
ひらひらと軽く手を振って見送った後、眠たそうに大きな欠伸を洩らしたのはロイだった。エプロンをしている辺り、朝食の手伝いをしていたらしい。
「寝てないんですかぁ?」
ヨッシーは顔を覗き込むようにして首を傾げる。
「それはいけませんわ。後は大丈夫ですから、部屋に戻って」
「や、全然っ! 平気平気!」
続けてゼルダが心配そうに声をかければ、慌ててロイは己の両頬を同時に二度叩いて眠気を覚まし、笑って。ゼルダとヨッシーは顔を見合わせる。
「おーい」
その時、やって来たのはファルコだった。
「はいはぁい。おはようございますぅ」
「よっす。早速だが朝飯を三つ作ってくれ」
ロイは厨房の影から覗くようにしてファルコの周辺を確認。……近くでフォックスとラディスが話している。ロイは鍋の前に移動すると、蓋を開けた。
朝の定番、味噌汁のいい匂いがして。お玉を使って掬い、ゼルダが用意したお椀にそれぞれ注ぎ入れる。そして二人の目を盗んで調味料入れの中からタバスコを選んで手に取ると、それを味噌汁に振りかけた。色が変わらないよう、注意を払って。
「ロイさん、出来ましたか?」
「ッ!」
びくっと肩を跳ねさせて。
「へ、へい! 只今!」
こぼさないよう慎重にお盆の上に並べて、それを受取口から手渡す。
「ありがとう」
それをラディスが受け取った時。――ごめんな、と密かに心の中で囁いた。