第五章
――次の日の朝のことである。
「ラディス!?」
洗面所で眠気の抜けないまま、のろのろと歯磨きをしていたフォックスは二度見の直後に声を上げた。目の下に隈を作って現れたのはラディスである。
「ああ? どうし……って、ラディスか!?」
フォックスを間に挟んで顔を覗かせたファルコもこの反応。
「悪い夢でも見たのか?」
「んなオメーじゃあるまいし」
「いやぁ……」
頭を掻きながら静かに目を逸らしてラディス、苦笑い。
「睡眠妨害」
ぽつりと呟き、洗面所に入ってきたのはサムスだった。
「あの王子様の部屋、隣だから。扉の開く音で起きちゃったんだもの」
言わなくてもよかったのに、と言いたげなラディスを一瞥。サムスはすっとフォックスとファルコの間に割って入ると、持参した櫛で髪を梳かし始めて。
「たまらないわよ。あちらとしては扉をノックするだけの簡単な作業でしょうけど。その度に起きていたのでは睡眠不足になってしまうのも仕方がないわ」
子供かよ!
「や、俺は全然平気だから!」
ラディスは慌てて両手を振ってみせる。
「それにどうせ昼寝するだろうし」
……はたしてそういう問題だっただろうか。
「ま、よかったんじゃねーか? 多すぎるくらいの睡眠時間が削られて」
「ファルコ!」
「睡眠の取りすぎは健康に悪いのよ」
サムスまで。
「物は考えようだな……」
フォックスは一人そう呟いて、溜め息。