第五章
「――成る程な」
所変わって、ここはクレシスの部屋。
「ちょいと訳ありの王子様って分かってりゃオブラートに包めたものを、はっきり返しちまったのが仇になって初っ端から敵意剥き出しにされていると」
改めて言われると。ラディスはがっくりと肩を落とす。
……ちなみに、時刻は午後九時をとっくに過ぎていた。あの後、確かに刺々しい視線を何度も感じたが、いたぶると発言した割には嫌がらせのようなものを受けることもなく。幸い、といえばそうかもしれない。あれが口だけならいいのだが。
有言実行――ああいったタイプには有りがちで、それが一番困るのだ。
「……気にしてたってしょうがねえだろ」
「うわっ」
ベッドの縁に腰掛けたラディスの後ろに回って、頭の上に被せていたタオルを使い髪を乱雑に掻く。風呂上がりなので、髪がまだ濡れていたのだ。
「……、」
シャンプーの匂いがふわっと香る。
「どうにかなるって」
「本当か?」
「馬鹿。お前が弱気になってどうすんだよ」
クレシスは小さく息を吐き出す。
「……させねえから」
今度は、俺たちが。
「へっ?」
お前を絶対に守ってやるよ。
「クレシス、何か言ったか?」
「さっさと寝ろ。クズ」
「えー……」