第五章
「くっ」
こいつ――僕の姿形だけじゃない、器用にも動きを真似てくる。
「あれ? 王子様、息が上がってるよ?」
からかうように言って剣を払われれば、マルスは翻すようにして躱しつつ腕を引いて、剣を突き出した。カービィはそれを大きく仰け反って躱すと、瞬時にその場に片膝を付いて身を屈めた姿勢のまま、足払いを仕掛けて。
見事に引っかかってしまったが、動じない。後方に倒れかかりながらもすぐにバク転の姿勢に切り替えて、地面に手を付いて跳び、後転。着地したところで息をつく間もなくカービィは剣を打ち払って素早く詰め寄ってくる。マルスは剣を構えて。
「あはっ、もしかして怒ってるのかい?」
カービィは答えない。
「知ってるよ……」
けたたましく金属音が鳴り響く。
「優しい言葉をかけられて、それでようやく救われたなんて舞い上がって」
僕は知っている。
「なっさけないよねぇ。そんなの、自分の株を上げる為の嘘、偽りに決まってるじゃないか。リーダーなんてのはそれがお仕事、義務のようなものなんだよ」
この世界には嘘が多すぎる。
「――お仲間さんの傷を舐めて愛でて差し上げるのがね!」
人は、嘘に優しすぎる。
「……ねえ」
いよいよカービィの目の色が変わった。鋭く、その瞳に迷いはなく。
「権力でも財力でもどうしようもならないような傷、あげようか?」
にやり、口元を歪めた――