第五章
まずい。早く、早くマルスを止めないと――
「っ……」
あの時から、俺はあいつのやり方を全て肯定して生きていくと誓った。
そうだ。激しい音を立てて交える刃も、地面を踏み鳴らす軽快なステップも……止めることなんてない。全部、あいつの好きなようにさせればいい。
……だって、そうだろ? 間違ってなんかいない。自分で言ってたじゃないか。
いつ如何なる時も正しいのは全て、お前ただ一人だって――
「赤い髪の兄ちゃんっ!」
そう呼ばれて、男ははっと我に返る。
視線を下ろせばそこにはドンキーがいた。あの場を離れた後、ぼうっと立ち尽くす彼を見つけて急ぎ駆けつけたらしい。ドンキーはその腰に据えた剣を見つめる。
「兄ちゃん、剣士なんやろ?」
「そ、そりゃあ、まあ……」
「せやったら今すぐあの二人止めたって!」
ずいと詰め寄るドンキーに男は思わず身を引く。
「子供やって分かる! あんなん遊びとちゃうやん、殺されてまうよ!」
「そっ……、んなわけないだろ! あいつは優しいんだ!」
ドンキーはむっとして。
「せやけど! やったらなんで剣なんか振り回すん!」
「し、知らねえよ。あのコスプレピンクが何か変なこと言ったんじゃねーの」
言い合っている場合じゃない。ドンキーは男に頼るのを諦めたのか剣を交えるマルスとカービィの元へ。巻き添えを食わないように離れた位置から、
「なあ! ええ加減やめたってや! 危ないって!」
しかし、当然のように剣戟は音を止めない。