第五章
「はい、どーぞぉ」
食堂の奥にある受取口で調理を担当しているヨッシーから今日の朝食を乗せたお盆を受け取り、目に付いた適当な席に腰を下ろす。さていただこう、と手を合わせてから箸を手に取ったのも束の間、影が差したので視線を上げる。
「珍しいじゃねえか」
その男、クレシスはにやりと笑って。
「普段ねぼすけのお前が」
彼はもう朝食を済ませているようだった。まあ、この時間だし朝食を済ませていなかったのは自分くらいだろうが。クレシスは向かいの席に腰掛けて。
「察してくれ」
「悪いもんでも見たような顔だな」
実際に見たんだけどな。
「……そういやぁ知ってるか?」
クレシスはテーブルの上に頬杖をついて話を切り出す。
「新入隊員の話」
ああ、クッパとガノンドロフのことだろうか。マスターが勝手に話を進めるものだから今更噂になってるんだな。ラディスは魚の骨を箸で取り除きながら、
「知ってるよ」
「嘘つくな」
「あづっ!」
がんっ、とテーブル下でクレシスのつま先が脛にヒット。
「知ったかぶりすんな。特徴は?」
ラディスは痛みに悶えながら、
「か、金持ちの悪党……」
するとクレシス、少しだけ目を丸くして。
「……本当に知ってたんだな」