第五章
鶴の一声。ラディスのそれでリンクとガノンドロフは同時に目を向けた。
「……何でしょう」
「鼠の分際で、この魔王の邪魔立てをするつもりか」
とはいえ、これである。ラディスはうっと言葉を詰まらせ、どうしたものかと視線を彷徨わせて。ああやって止めておきながら、先のことは全く考えていなかったのである。それをいち早く察したユウ、小さく溜め息。
「……リンク」
くいと彼の袖を引いて、
「外で遊ぼう」
リンクは暫し口を閉ざしていたが、やがて盾を仕舞い、剣を鞘に戻すと。
「そうですね。子供は風の子ですから」
そう言ってにこり、笑った。
「……、」
先程のドンキーやリムと同様、ユウとリンクが抜けようとしたその時である。
廊下を少し歩いたところでリンクはぴたりと立ち止まり、此方に視線を寄越したのだ。ラディスが怪訝そうに首を傾げて視線を辿ると、その先には。
「ガノンドロフ」
リンクはぽつりとそう呼んで、目を逸らした。
「……庭の風は気持ちがいいですから」
言い残して、駆け出す。その後をユウが追いかけて。
「やっぱり子供は可愛いな!」
「貴様の目は節穴か」
「よし、我が輩たちも繰り出すぞ!」
そう言って走りだしたクッパを目に、ガノンドロフは初めて、やれやれといった具合に小さく息を吐き出す。それでいてゆっくりと歩きだした彼は。
……何処か楽しそうに見えた。気がする。