第四章-後編-
先代の意志だけでなく、神をも冒涜しうる行為。それまでの運命をかなぐり捨てた選択。勇者ではない、一人の人間として。たった一人の人間の為に。
決して迷いのないその意志は。
トライフォースが認めた――少年の、したたかな勇気。
「……でも、だからって」
リンクはゆっくりと辺りを見回す。
「こんな……」
決してその力を見くびっているわけではない。だが、己に宿る勇気のトライフォースだけの力でこんなことが出来るとは到底思えなかったのだ。
「トライフォースは手にしたその者の強い意志に応えると言い伝えられています」
「でも、それはあくまで三つ手にした場合の話じゃ……」
暫く黙り込んだ後でゼルダは口を開く。
「……もし、それぞれを宿す三人の意志が全く同じものだったとしたら?」
――生きたい。
「じゃあ」
「くだらん」
それまでその場に腰を下ろしていたガノンドロフは立ち上がった。
「ガノンドロフ」
「よもや勇者や姫にだけでなく、神にまで愚弄されるとはな」
彼は、恨んでいるのだろうか。
リンクはただ黙って見上げていて。ガノンドロフは二人の少年少女をそれぞれの瞳に映し、目を細めた。マントを翻して背を向け、歩きだす。
「……全く」
最後、ガノンドロフはぽつりと呟いた。
「我が人生に色を塗りたくる。厄介な生き物よ――」