第四章-後編-
「――させませんよ」
隣から伸びてきたしなやかな二本の手が、ガノンドロフの腕を掴んだ。
「ゼルダ……」
リンクは呆然と声を洩らして。
「前代未聞ですよ。こんなこと……」
さすがのガノンドロフも目を開いた。まさか、ゼルダまでもが彼らを振り払って此方に駆けつけ、手助けするとは思わなかったのだ。
一方でラディス達も驚いていた。
「姫さん!」
叫ぶが、床だって既に脆く、踏み出せば崩れる恐れがある。
「行ったって無駄だぜ。……ったく。こんなことになるなんてな」
ダークリンクにとっても想定外の事態だったらしいが、ここにいる誰よりも冷静だった。天井が崩れ、遂にリンク達のいる所への進路が塞がれる。
「さて。俺もそろそろ退散するとすっか」
そう言って、ダークリンクはその場を離れると硝子の割れた窓に足を掛けて蹴り出し、そのまま外へと飛び出した。こんな高さで――ラディスは急いでその窓へ駆けつけると、身を乗り出して覗き込んだ。そこに、ダークリンクの姿はなく。
「くくっ……」
その含み笑いに天井の開けた場所から空を見上げると、真っ黒な翼を持った魔物の背中にダークリンクが跨っていた。その後ろを横切るのは、二機のアーウィン。
「ファルコ!」
フォックスの呼び声に頷いて、二人も硝子の割れた窓から外へと飛び出した。
遠隔操作によってハッチを開いたアーウィンは急降下、落ちてきたフォックスとファルコの体をちょうどコックピット部分で受け止めて上昇。二人は座り直してハッチを閉めると、それぞれ無線を繋いでハンドルを握った。
「そこの窓から飛び降りろ! 俺たちが掬い上げる!」
「っでも!」
躊躇うラディスに、フォックスは続けて口を開く。
「もう時間がないんだ! 早く!」