第四章-後編-
そんなの、分かっている。
勇者が魔王を助けようとしているなんて――誰かが許すはずはない。
「……聞こえているのか。離せと言っている」
無論、それは魔王であるガノンドロフ自身も。
「っ……嫌なんです」
リンクは絞り出したような声を洩らす。
「あんなことして……っ俺が、何の後悔もなく生きられるはず、ない……」
天井が崩れ、地面が揺れようと。リンクは頑なに手離すことを拒んだ。
「俺だけが生き残れたって……意味なんか、ないんです……!」
もちろん、リンク自身が巻き添えになる可能性もあった。――それでも。
「生きてほしいんです、っ貴方には……」
繰り返したくない。
「一人の、人間として……!」
――繰り返したくない!
「……死ぬぞ」
「死にません。意地があると言ったでしょう」
リンクはくすっと笑みをこぼした。
が、次の瞬間地面は再び大きく揺れて。ずる、とガノンドロフの体が重みで引っ張られた。それでもリンクは手離さず、奥歯を噛み締めて。ああ、腕が震える。
先の見えない戦いに、気が遠くなりそうだ。
「く、っ……」
辛そうに表情を歪ませるリンクに、ガノンドロフはそれまで無気力に垂らしていたもう片方の手をおもむろに伸ばした。自分の腕を掴む彼の両手に手を翳し、黒みを帯びた紫色の光をじわじわと吸収させていく。リンクははっと目を開いた。