第四章-後編-
「っえ」
リンクは小さく声を洩らした。
次の瞬間ガノンドロフに襟首を掴まれ、ぽいと放り投げられたのである。その先でちょうど跪いていたラディスは、飛んできたリンクの体を受け止めて。
「ガノンドロフ!」
どうして――リンクが声を上げたが、彼は答えなかった。
「ラディス! 早くそいつを連れてこっちに!」
「ああ!」
もう時間がない。一刻も早くアーウィンが駆けつけてくれるのを願いながら、ラディスはリンクの腕を引いてクレシスの元へ。リンクは振り返った。
彼の足下が崩れるのが見えて、目を逸らすようにぎゅっと瞼を瞑る。心臓が内側から体を叩いてるみたいで、騒がしい。この感情は何だろう。自分の中でそれまで無かった何かがひたすらに渦を巻いている。……それは。
ほんのひと握りの、勇気――
「なっ」
次の瞬間、リンクはラディスの手を払って駆け出していた。
彼の体が落ちていく――その姿を瞳に映し、瓦礫に躓きそうになりながらも駆けつけ、腹這いになって身を乗り出しながら両手を使って腕を掴む。その重みに、がくんと自分の体も引っ張られてしまいそうだった。
「……何をしている」
ガノンドロフはぽつりと声を洩らして。
「離せ。貴様に生かされ、屈辱を背負って生きるつもりなど毛頭無い」
それでも、リンクは手を離さない。
「分かっているのか」
ガノンドロフは続ける。
「貴様の行為は先代の意志だけでなく、神をも冒涜しうるものなのだぞ」