第四章-後編-
「ちょっとぉ!」
「崩れるんじゃねえか!?」
壁にはヒビが入り、床は既に崩壊を始めている。天井が崩れ、落ちてきたシャンデリアが一つ目の巨大な魔物を押し潰した。舞い上がる砂埃、親玉を失ったゴブリンタイプの魔物たちはパニックを起こし、棍棒を手放すと逃げ惑って。
「兄さん!……クッパ!」
「な、なんだ。我が輩のせいではないぞ!」
ルイージは身を乗り出すようにして砂埃に包み込まれ、崩壊していく城を見下ろしていた。眉を寄せ、柱に固く括り付けられていた縄梯子を下ろそうとした――その時である。砂埃の中から炎の柱が突き出し、ヴァルバジアが飛び出してきたのだ。
「しぶとい奴だ。撃ち落とせ!」
クッパが腕を横に払うと全ての砲台がヴァルバジアに向けられ、連続して砲弾が放たれた。一発、二発と躱したものの炎の塊を吐き出そうと大きく口を開いたところで砲弾が甲殻に直撃、その後も次々と命中し、ヴァルバジアは墜落――城に。
「がーっはっはっは! ざまあみろなのだ!」
派手に舞い上がる砂埃に、ルイージは口角をひくひく。……もはや何も言うまい。
「っ、キツネ! それからトリ!」
「あぁあ!?」
「アーウィンだよ! あいつを使って脱出するんだ!」
クレシスが言うと、ファルコはフォックスと顔を見合わせて舌打ち。その間にも城は徐々に崩れ、崩壊していく。ラディスも地面の揺れによろめき、跪いて。
「リンク!」
クレシスに手を借りながらそれまで崩れの少ない、安全と思われる箇所に移動しようとしていたゼルダは振り返り、はっとした。リンクの足下の床にヒビが入り、崩壊したのである。ゼルダはクレシスの手を払い、飛び出そうとするが。
「行くな! あんたまで巻き込まれるぞ!」
クレシスがすかさず腕を掴み、留めて。
「っでも、このままではリンクが!」
伸ばしたその手が届くはずもなく。リンクはまるで引きずり込まれるようにして、大きく口を開いた先の見えない奈落の底へ――