第四章-後編-
二人が剣を交える様を見て、ラディスは何故かほっとしていた。
それが世界を大きく変えることになる戦いだとか、はたまた単なる殺し合いだとかには見えなかったのだ。言うなれば、双方がそれを望み、楽しんでいるような――
「ッ!?」
地響き。この部屋だけじゃない、城全体が揺れているんだ。
突然訪れたそれに、リンクとガノンドロフは思わず剣戟を止めた。スタルフォスもこの揺れの中では敵わないのか、音を立てて崩れてしまい。
「ちょっと! これもあんたのチート技ってわけ!?」
壁に縋るようにしてカービィが声を上げるが、ガノンドロフの様子からしてどうやらそうではないらしい。リンクはその場に剣を突き立て、跪いた。
「っ……おい。今の声」
咆哮。何処かで聞いたことがある。
「随分とお楽しみじゃねーの?」
ああ――この声は。
次の瞬間、凄まじい音を立てて床を下方向から突き破り、とある巨大な魔物がその全貌を明らかにした。赤く燃ゆるたてがみに、顔面を覆う甲殻。
間違いない。あの時と同じ、邪竜ヴァルバジア――!
「倒したんじゃなかったのかよ! そいつ!」
「いや、そのはずだが」
一度天井を突き破って外に飛び出したかと思えば今度は窓から突撃し、宙に浮遊しながら静止。声を上げるクレシスに、ラディスは顔を顰めて。
「くくっ……邪魔しちゃ悪かったかぁ?」
ヴァルバジアの背の上。その男はにやりと笑って。
「よお。死に損ないども」