第四章-後編-
スタルフォスの突進を翻すようにして躱し、その先のスタルフォスを斬り捨ててガノンドロフの元へ駆け出す。復活したスタルフォスの脇を潜り、斬りかかる。
「――つまらん。所詮は一時の病よ」
その剣が届く、直前で。ガノンドロフの目の前に新たなスタルフォスがふらりと立ち塞がり、剣を交えて受け止めた。リンクは分が悪そうに眉を寄せて。
「貴様は世界の調和を図る為の人柱に過ぎん」
「悪魔の囁きですね。もう騙されませんよ」
リンクはぎり、と剣を交えたまま踏み込む。
「かつて人々が望んだ勇者は遠い昔に消えたんです。今はその面影を重ねているだけ……俺も、ゼルダも。そして……貴方も」
ガノンドロフは目を細める。
「何が言いたい」
「やめませんか? 運命だ何だと。俺たちは一人の人間ですよ」
リンクはスタルフォスの剣を弾くと、下から真っ直ぐと振り上げて真っ二つに斬り捨てた。続けて剣を構えたが背後に気配を感じ取り、振り向きつつ躱して。
「……戯れ言を」
スタルフォスと応戦する様を眺めながら、ガノンドロフは剣の柄を握る手に力を込めた。足下で蠢くスタルフォスを踏みつけて進み、剣を打ち払う。
「それで慰めているつもりか?」
スタルフォスの攻撃が止んだ直後に打ち込んできたガノンドロフに、リンクは剣や盾を駆使して防御しながらにやりと笑って。
「ええ。だから、俺は貴方を殺しません」
「愚弄してくれるな。何様のつもりかは知らんが」
一瞬の隙を突いて剣を薙ぎ、交える。リンクは答えた。
「さあ。神様にでもなったつもりなのかもしれませんね」
――実に、愚かな人間よ。
ガノンドロフはリンクを見下ろし、にやりと笑った。