第四章-後編-
「哀れなものよ」
スタルフォスと応戦中のリンクを眺め、ガノンドロフは口を開く。
「その輝きはもはや放たぬ。トライフォースは貴様を見放したのだ」
そうだ。トライフォースの示す光さえあれば闇を払い、目の前のスタルフォスは一瞬にして消え失せただろう。リンクが顔を顰め、息を余計に弾ませることもなかったはずなのだ。……が、それは今更どうしようもない望みだった。
「何に縋ってその身を守ろうとするのだ。リンク」
リンクはスタルフォスの振り下ろした剣を盾で受け止めて。
「っ……」
いつからだろう。トライフォースが輝きを放たなくなったのは。
その輝きが自慢だったわけではない。だが色を示さないそれは血の紋章も同然で、ただひたすらに疎ましかった。運命を形にして刻み付けられたみたいで。
どうか解放してほしい。空に祈った望みは、吸い込まれるようにして消えた。
――それでも。
「仕方ない、じゃないですか」
リンクは必死に耐え凌ぎながら、声を洩らす。
「約束、したんです」
貴方たちに会って初めて、自分の命を愛おしいと思えた。
生きる為に必死になっている。
――生きたいと、強く願っている。
「嘘つきは泥棒の始まり、なんて言うじゃないですか」
リンクは盾でスタルフォスの剣をようやく弾き、剣を横に払って脇腹から真っ二つに斬り捨てた。続けて回り込んだスタルフォスの腹を蹴りで砕き、笑み。
「盗賊に転職なんてまっぴらですよ。――ガノンドロフ」