第四章-後編-
金属音が鳴り響く。
でかい図体の割にこれがまた速いのだ。もちろん、それ以上の敵と戦ったこともあるが、あくまで魔物の話である。相手が自分の意思で動ける人間ともなれば苦戦を強いられるのはもはや必然。それもただの人間ではなく魔王、なのだ。
「ッ、」
攻撃の全てに重みがある――斬撃、というより打撃に近い。
薙ぎ払いを盾で防いだが弾かれ、リンクは顔を顰めた。連続して剣を払われればすかさず剣を構え、防御。しかし咄嗟の判断で繰り出したそれで魔王の勢いと力を殺せるはずもなく、リンクは剣諸共大きく弾かれ、吹き飛ばされてしまい。
「リンク!」
宙を舞うようにして後転し、着地。直後にリンクはがくんと跪いて。
「……聞こえてますよ。平気です」
とは返したが、重い攻撃を何度も繰り返し受け止めていたお陰で両手にじんわりと痛みを感じてきた。グローブを外せば、きっと赤みを帯びていることだろう。
「やはり」
ガノンドロフは剣を打ち払って。
「小僧ごときに勇者は務まらんようだな」
「おや。でしたら、俺が成長するまで待っていてくれるんですか?」
リンクはくすっと笑って、立ち上がる。
「その頃にはハイラル諸共この世界が血の海に沈んでいることだろう」
「感心しませんね。海は青く澄んでいるからこそ、価値があるというものです」
ガノンドロフは目を細めた。
「……いいだろう」
リンクは剣を軽く振るい、構えた。不穏な空気が漂ってくる。それは先程とはもっと違う……じわり、じわりと這うようにして迫ってくるような恐怖と――不安。
「望みとあらば」
ガノンドロフはふと口角を吊り上げて。
「――その蒼い海に貴様の骸を葬ってくれる!」