第四章-後編-



ガノンドロフはふんと鼻を鳴らした。――次の瞬間。

中央で対峙する二人を、大きく円を描くようにして橙色の炎が囲ったのだ。まるで戦いの時を祝福し、それでいて逃さんとするように。

「これはまた随分と悪趣味ですね。子供をこんな所に閉じ込めて」
「自覚があるなら返してもらおう」

ガノンドロフは表情を変えなかった。すっと右手を横に払って手のひらを床に向けて翳す。間もなく、床には白く小さな魔法陣が浮かび上がり、その中心からゆっくりと白銀の剣が抜き取られた。リンクは目を細めて。

「子供には過ぎた玩具だ」


――いよいよ、始まってしまったのだ。魔王と勇者の戦いが。


「あの形状」

ぽつりと声を洩らしたのは、カービィ。

「剣だよ。あいつが持ってるヤツ」

ラディスが怪訝そうな視線を送ると、カービィは小さく息を吐き出して答えた。

「かつて、ガノンドロフに封印を施そうとした賢者が使っていたとされる剣」
「おいおい。んなもんなんであいつが……」
「分かんないの?」

カービィは続けた。

「賢者は七人いたんだよ」


……その言葉が意味するのは。

魔王ガノンドロフとの圧倒的な力の差――


「カービィは物知りだな」

ラディスが感心していると、カービィはふふんと笑って。

「やっぱこういうファンタジー系には語り役が必要不可欠だからね」
「いや分かってても口にしちゃ駄目だろ!」
「大人の事情だな……」
 
 
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