第一章



「ちょ、ラディス! 時間!」
「おっとそうだった」

思わず和んでしまった。

ルピリアにルーティを預け、ブーツを履き慣らしながらドアノブに手を掛ける。

「……あ、ルピリア」

忘れ物――きょとんとしている彼女の元へ歩み寄り、頬っぺたにちゅっ。次いでルーティの頭に口付けを落とし、改めて。

「行ってくるよ」

にこり。扉を押し開く。

彼が飛び出し、扉が閉まった後でルーティを抱き直し、ルピリアはくすっと笑って。

「……もう」


先程も説明したように、今日は彼がDX部隊として旅立つ大事な日。約束の時間、八時までにエアポートへ向かわなければいけないというのに、生憎の寝坊。

しかし彼は動揺する様子もなく、最短ルートを選んで木から木へと猿のように飛び移り、目的のエアポートへ。メヌエルで生まれ育った彼にとって、いくら森林といえどそれは単なる庭に過ぎないのである。
 
 
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