第四章-後編-
あいつが……魔王、ガノンドロフ。
「随分と面白いことを為されているようで」
リンクに釣られて、ラディスはガノンドロフの頭上に注目する。
「――ゼルダ姫」
声を上げる、というよりはぽつりと呟く形で。それほどにその光景があまりにも衝撃的で、だからこそラディス以外はただ目を開くばかりだった。
ゼルダは――シャンデリアの近く、ガノンドロフの頭上に仰向けの状態で宙に浮いており、それでいて落ちる気配はなかった。彼女の体には仄かに金色の光が灯り、そして彼女自身も苦しそうに顔を歪ませ、震えている。
「我が姫には美しいまま、居てもらわなくてな」
……まさか。
「落ち着いてください」
ファルコが構え、踏み出すとリンクはすかさず腕を横に払い、止めた。
「トライフォースがそう簡単に宿主の体を離れることはありません」
「だから見てろってのかよ!」
「彼の魔術を打ち破れるのは恐らく、同じくトライフォースを宿した者だけ」
リンクはおもむろに剣を抜き、踏み出す。
「ここは、俺に任せてください」
彼の考えとしては、自分がゼルダを拘束する魔術を打ち破るので、解放された隙に救出しろということだろう。それでも全員でかかった方がいいのだろうが……
「……分かった」
結果、全員がやられては元も子もないのだ。
子供だから不安だとか、そうは言ってられない。彼だって戦士、それでいて勇気のトライフォースを宿す勇者なのだ。その彼が、今、勇気を試されている。
――全てを失う、覚悟を胸に。