第四章-後編-
本当に――彼は、とんでもない人だ。
「そいつぁ楽しみだぜ。なあフォックス?」
「子供の手前、嘘はつけないぞ? ラディス」
「……あっ」
ファルコとフォックスが口々に言うと、やはりというか彼は我に返ってそれはその、ええと、なんてしどろもどろになってしまったが。
「口だけなら何とでも言えますけどね」
「お、俺は嘘なんかつかないさ!」
「どうでしょうか」
そう言って、リンクは背中を向ける。表情は、和らいでいた。
「……子供って」
ギィ、と軋ませて扉を開く。
「甘いものには五月蝿いんですよ?」
ゆっくりと押し開かれた扉の向こうには、今までのどの部屋にも引けを取らない大広間が待ち受けていた。中央の天井には巨大なシャンデリア、奥にはパイプオルガン……幾つかある窓からは、一体どんな景色が見えるのだろうか。
「王の部屋といえば、玉座のイメージがあったんだがな……」
「へえ、パイプオルガン? いい趣味をお持ちで」
「――呑気に言ってる場合じゃなさそうだぞ」
マリオは部屋の中央に背を向けて佇む、一人の男を睨みつけた。
暗い色合いの衣服を身に纏ったその男は、此方の存在に気付いたのか少しだけ顔を向けた。マントを靡かせておもむろに振り返り、口を開く。
「勇者リンク。……ようやく現れたか」