第四章-後編-
「ま、マリオ……?」
冗談だろ。俺は夢を見ているのか?
傷がないなんて――
「何しやがるッ!」
刹那、飛んできた蹴りがクリーンヒット。マリオは「ごふっ!」と声を上げて数メートル先に転がると、帽子を直しながらのっそりと起き上がった。
「まさか、マリオにそっちの趣味があったなんてねぇ……」
「あるか!」
明らかに引いたような顔でそう呟くカービィに、マリオは咄嗟に否定。続けてもう一度クレシスを見遣ると、何を勘違いしたのかラディスが庇って。
「あのなぁぁ……!」
「く、クレシスにそっちの趣味はないぞ。断じて!」
「いや俺だってねえよ! そうじゃなくて――」
言いかけて、やめた。
何たって無線は繋がったままなのだ。ここで正直に話せば筒抜け、だから無線を切るというのはあまりにも不自然……やむを得ず、ぐっと堪えて言葉を呑む。
「……いいから、行くぞ。ったく」
そう紡いで歩きだすと、誰もが首を傾げて。
――リンクは、奴が治療を施したのだと語っていた。だがあれはそんな領域の話じゃない。焼いた痕だけでなく、負ったはずの傷まで無くなっているなんて。
そんなこと現段階の医療技術では“不可能”だ。
あれは治療なんかじゃない。……魔術? それ以上だ。例えるなら、傷付いたパーツを新たに造り出し、結合、修復したような……いやまさか、そんなのは。
「有り得ない、ですよね」
マリオがはっと隣に目を向けると、リンクが並んで歩いていた。
「素性が明らかな彼ではないですから。今後も警戒はするべきです」
子供の癖に、勘の鋭い奴だ。
「ただのヒゲホモじゃなかったんですね」
「よし表に出ろ」