第一章
「各部屋の扉にそれぞれの名前を書いた紙を貼っておいた。部屋は変えても構わないが、荷物の移動は自己責任で」
門を開くと、広々とした庭が出迎えた。
傍らに生えた大きな木の木陰と、可愛らしい小さな花が散りばめられた草地は日当たり良好。昼寝に適している。
対する平地は地面も硬すぎず、此方はトレーニングで踏み鳴らすのも悪くない……
「……ラディス?」
フォックスは怪訝そうに顔を覗き込んで。
「無駄だろうな。いつものことだ」
ユウはふんと鼻を鳴らす。
「こいつ、たまにトリップすっから」
「え?」
クレシスが呆れ気味に親指で差しても尚、本人は気付いてない様子。
「おっ、あれもいいな……」
「ラディスってば、お花畑なんだから」
リムは小さく溜め息を吐き出して。
「や、それ重症なんじゃ……」