第四章-後編-



「……だからって」

あんな姿、見せつけられたら。

ラディスが眉を寄せると、カービィはふいと目を逸らした。それでも腕は下ろさず、しっかりとダークリンクに剣を向けたまま。やがて、ぽつりと口を開く。


「仕方ないでしょ。ムカついたんだから」


その台詞には誰もが驚いたことだろう。

「カービィ……」
「もう。急いでるんだからさっさと済ませちゃおうよ」

ラディスは小さく笑みをこぼす。こんな状況下ではあるが、彼もあれでDX部隊の立派な一員であり仲間なのだと感じたのだ。二週間前とはえらい違いである。

「にやにやしないでくれる? 気持ち悪い」

振り返ったカービィに、ラディスは「はいはい」と返して。

「なんだ。てめえも化け物かよ」

ダークリンクは不意ににやりと笑った。

「一緒にしないでくれる?」

カービィはじっと見下ろして。

「くくっ……」
「んなことよりさっさと答えてもらおうじゃねえか」

歩み寄ってきたファルコが腕を組んで睨みつけると、ダークリンクは相変わらず不適な笑みを浮かべたまま、己の腹部の傷に指を這わせた。――そして。


ずぶ、と己の傷口に差し込んで。


「っ……!」

一瞬、何が起こったのか分からなかった。

しかし彼はその表情を苦痛に歪めるどころか恍惚とさせ、躊躇した様子もなくその手を押し進めていくと、やがて何かを掴み、ずるりと引き摺り出して。
 
 
40/82ページ
スキ