第四章-後編-
「……だからって」
あんな姿、見せつけられたら。
ラディスが眉を寄せると、カービィはふいと目を逸らした。それでも腕は下ろさず、しっかりとダークリンクに剣を向けたまま。やがて、ぽつりと口を開く。
「仕方ないでしょ。ムカついたんだから」
その台詞には誰もが驚いたことだろう。
「カービィ……」
「もう。急いでるんだからさっさと済ませちゃおうよ」
ラディスは小さく笑みをこぼす。こんな状況下ではあるが、彼もあれでDX部隊の立派な一員であり仲間なのだと感じたのだ。二週間前とはえらい違いである。
「にやにやしないでくれる? 気持ち悪い」
振り返ったカービィに、ラディスは「はいはい」と返して。
「なんだ。てめえも化け物かよ」
ダークリンクは不意ににやりと笑った。
「一緒にしないでくれる?」
カービィはじっと見下ろして。
「くくっ……」
「んなことよりさっさと答えてもらおうじゃねえか」
歩み寄ってきたファルコが腕を組んで睨みつけると、ダークリンクは相変わらず不適な笑みを浮かべたまま、己の腹部の傷に指を這わせた。――そして。
ずぶ、と己の傷口に差し込んで。
「っ……!」
一瞬、何が起こったのか分からなかった。
しかし彼はその表情を苦痛に歪めるどころか恍惚とさせ、躊躇した様子もなくその手を押し進めていくと、やがて何かを掴み、ずるりと引き摺り出して。