第四章-後編-
その瞬間――ダークリンクは不適に笑みを歪ませる。
「あっははは! そうだ! 俺は壊れている!」
突如として渦を巻き始めた狂気に、全員が構えた。
「たまんねえだろぉ? 舞い上がる血飛沫、悲痛な叫び声、恐怖と絶望に満ちたその表情……どれを取ってもぞくぞくする。癖になる。やめらんねえんだよ」
ダークリンクはにやりと笑って。
「人の希望を踏み躙り、未来を奪うその瞬間を一度、味わったからにはなぁ!」
――まさか。
「っ悪趣味野郎……!」
ファルコはそう呟いて顔を顰めた。
「あっははは! そうだよ。俺はずっと、あいつらの可能性を壊してきた」
腹を抱えて前屈みになり、ダークリンクはけらけらと笑う。
「あいつらは一生、あの血塗られた紋章を背負って生きるんだ。そこに希望なんてありゃしない。何度だって絶望させてやる。――それが俺の生きがいなんだよ!」
たったそれだけの為に、彼は。関係のない人達を……犠牲に……
「ラディス」
握った拳が震えているのを見て、フォックスは静かにその名を呼んだ。
「……分かってる」
ラディスは顔を顰める。
「こんな、人を許せないと思ったのは初めてだ」
ダークリンクはひと頻り笑った後で、ようやく顔を上げた。
「……さて。自己紹介はここまでだ」
口元には薄い笑みを浮かべたまま。一歩、踏み出す。
「怒り、憎しみ、恨み……それぞれは十分に募った」
鞘からおもむろに剣を引き抜き、軽く振るって。
「始めようじゃねえか。――殺し合いを」