第四章-後編-
「あーあ」
ダークリンクはわざとらしく声を上げて、枯木から飛び下りた。
水が跳ねて幾つかの波紋が広がり、澄んだ水面に映し出されたダークリンクの笑みを歪ませる。くくっ、と喉を鳴らして笑うダークリンクに、緊張が走った。
「せっかくイイ顔してたってのに……なぁ?」
カービィは顔を顰める。
「……へえ。道理で、あんたにはお似合いだよ」
「んん?」
ダークリンクはかくんと首を傾けた。
「“血の匂い”」
――ぞっとした。部屋に入る前に感じた違和感はこれだったのか。
「ふ、」
ダークリンクは小さく吹き出した。
「あははっ! 分かるってことは、てめえも嗅いだんだな?」
そう言って顔を俯かせ、尚も肩を震わせる。
「なあ……イイ匂いだろ? 鮮血は格別。さっきは楽しかったぜ……?」
続けて顔を上げたダークリンクの瞳は、確実にラディスを捉えていた。嘲り、挑発しているのか。だからといってすぐに乗るのは賢くない。
ラディスは黙っていた。ただ、拳を固く握り締めて。
「狂ってんね、あんた」
そう返したのはカービィだった。
「……この俺が?」
「そっ。あんた、最高にクレイジーだよ」