第四章-後編-
あれから一時間は経っただろうか。
ラディス達はまだ行ってないであろう、錠の掛かった扉の前にいた。マリオはポケットから鍵を取り出すと、鍵穴に差し込んで捻り、解放。
「この先に魔王がいんのか?」
「さて、どうかな」
そう返したのはカービィである。
「分かるんだよ。そういう“匂い”ってのかな」
ふざけているのではない。どうやら本気で言っているのだ。
「……開けるぞ」
ぽつりと口を開いて、マリオは扉に触れた。ドアノブが取り付けられていないその扉は、仕掛けによって上方向へと自動的に持ち上がり、そのまま静止。
鬼が出るか、蛇が出るか。それぞれは息を呑み、踏み出した――
ここは本当に城の中にある一室なのだろうか。
部屋一面には水が張っており、ラディス達を映し出している。試しにラディスが爪先から踵にかけて慎重に足を下ろし、続けて体重をかけるが沈まない。
少し、歩いてみる。これは巨大な水溜まりなのだろう、沈まないと知ると他の四人も歩きだした。――と、扉が下りてきて閉まり、更に鉄格子で封鎖されて。
「随分と鼻が利くみてえだな」
この声は、まさか。扉に暫し気を取られていたラディスは振り返った。
「……よお」
間違いない。そこにいたのはダークリンクである。
この部屋の恐らく中央に当たる場所、枯木の枝の上でいつの間にか腰を下ろしていたその男は、やけにつまらなそうな顔でラディスをじっと見つめて。