第四章-後編-
「ラディス。状況を説明しろ」
そんな中、マスターは表情ひとつ変えずに口を開いた。
――そっか。俺、リーダーだっけ。それまでじっとクレシスを見つめていたラディスは、ふらりと立ち上がった。ゆっくりと踏み出し、マスターの元へと向かう。
「……こっちに来い。渡しておきたい物もある」
マスターの部屋に入るのは、まだ指で数える程度だった。
いつもパソコンは点けっぱなしで、ここの電気代が高いのはこいつのせいじゃないのか、とさえ思う。仄かに薬品の匂いもするし、そもそも最近は白衣に眼鏡といった服装の組み合わせが目立つ。実はマッドサイエンティストとか。
……今は考えている場合じゃないか。
「まずは状況の説明をしてもらう。無理にとは言わないが」
マスターは机の反対側に回り込むと、厚みのある椅子に腰を下ろして。
「いや。気にしないでくれ」
その返しに、マスターはすっと視線を上げた。
「……ならいい」
ラディスは事細かに状況を説明した。
ハイラル国王女、ゼルダのこと。彼女とリンクが深い関係下にあったこと。
トライフォースのこと。それを狙って現れた青年、ダークリンクとは、以前にも顔を合わせていたということ。主謀者、ガノンドロフのこと。……
それでも結局、クレシスの話題には触れなかった。
無意識の内に避けていたのだろう。それにしたって、あんな惨状を目の当たりにしておきながら、よくもまあこうも詳しく説明してやれたものだ。
少し、感心を覚えた。自分は意外としっかりしてるんだな。
「……成る程な」
マスターは質問をしなかった。
する必要がなかったのだ。彼の説明で状況は把握した。問題はこの後、どう動くべきか……マスターはラディスを一瞥して、パソコンの画面に目を向ける。