第四章-後編-



リムは糸が切れたようにその場にぺたんと座り込む。

「いやああぁあっ!」

耳を劈くような悲鳴に、今度こそ全員が現実に引き戻された。

「いやっ! いやっ! ああぁあああ!」
「お、落ち着いて」
「やああぁあっ!」

ドンキーが手を伸ばしたが、振り払われて。全てを塞ぎ込んだかのように縮こまった彼女は、頭を抱えるようにしてガクガクと震えている。

「っ……」

見るに耐えられない姿だった。

「くそっ! なんで、こんなことに……」
「俺が、いけないんです」

悔しさから後ろ手で壁に拳を叩きつけるフォックスに、リンクは自嘲するようにぽつりと口を開く。表情は暗く、影が差していた。

「彼も言っていたでしょう。殺したも同然なんです」
「あんた、ええ加減にせえや」

ドンキーはリンクの胸ぐらを掴む。しかし、リンクは表情を変えない。

「殴りたい? 殺したい? ふふ、構いませんよ」

リンクは口元に笑みを浮かべる。


「それが運命だというのなら……もう、逃げませんから」


――彼の瞳は虚ろで、光を失っていた。

それなのに、頬を伝っていく一筋の雫にドンキーは言葉を失って。結局、顔を背けたかと思えば、突き放すようにしてリンクを解放した。

「……くそ」

何も出来なかったのが悔しい。

足が竦んで、動けなくて。それなのに、ああなったのが自分じゃなくてよかった、なんて一瞬でもそう思ってしまった、自分がいる。


――最低だ。


ドンキーは密かに、拳をぐっと握り締めた。
 
 
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