第一章



「くっ」

手を伸ばし、男の肩を掴んだ。

ぐいと後ろに引くと男は鞄を大きく振り回して抵抗。それをひらりと躱して、側頭部への回し蹴り。……会心の一撃だった。

「ラディス、大丈夫か!」

男が横たわる様を見届けてから、駆けてくるフォックスとファルコを振り返る。

「ああ。助かったよ」
「当たり前だろ」

その先は言わずとも分かっている。

フォックスとファルコ、それぞれとハイタッチを交わし、笑い合う。ゆっくりと体を起こし、拳銃を構える男にも気付かずに。

「っ、ラディス!」
「え――」

間もなく、銃声が街中に響き渡った。


「……はい。残念っした」

桃色の髪の青年が屈み込み、拳銃を構えた男の手を空に向けてくれたお陰で、誰一人大事には至らなかった。

三人は揃って安心したように息を吐き出し、ラディスは青年に歩み寄りながら。

「礼を言うよ。ありが」
「バッカじゃないの?」

その瞬間、場の空気が凍り付いた。
 
 
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