第四章-後編-
そんなの、嘘だ。
「呪え! 失望しろ! お前は結局、どうあがいたところで何かを犠牲にすることしかできねえんだ。それが定められた運命なんだよッ!」
リンクは頭を抱えると、ゆっくりと首を横に振った。
「あっははは! いい顔だなぁ? そうだ、もっと自分を責めろ。恨め、憎め!」
……やめて。
「絶望でこの俺を満たせ!――リンク!」
やめてやめてやめてやめて、
その時、食堂の扉がゆっくりと開いた。
ダークリンクは高笑いをぴたりと止めて、おもむろに目を向ける。食堂に足を踏み入れたその人物は、惨状に触れるよりも先にダークリンクに視線を返して。
「……ちっ」
ダークリンクは結晶の中のゼルダを尻目に捉えると、とんと床を踏み鳴らした。
次の瞬間、ぶわっと床から手の形をした幾つかの細い影が伸びてきて、ゼルダとダークリンクを丸く包み込んだ。かと思えば収縮と膨張を繰り返し、最終的には派手に弾けて消滅。暫し宙を舞っていた粒子も、やがて跡形もなく消えてしまい。
「随分と派手に散らかしてくれたものだ」
不穏な気配が消えると、マスターは改めて辺りを見回した。
ぴたりと目に止まったのは、血溜まりの中に横たわる一人の男。ゆっくりと歩み寄って、傍らに跪く。触れようと手を伸ばしたが、止めた。立ち上がり、もう一度辺りに目を走らせてから瞼を閉じると、小さく息を吐き出して。
ぱんっ、と一度、大きく手を打って鳴らした。
「……あ」
ぽつりと誰かが声を洩らして。
その時、彼らはようやく現状を理解したのだ。赤い赤い、ただひとつ、その光景が目に焼き付いて、気持ち悪くて。そこに、そこに倒れているのは。
「クレシス……」