第四章-後編-
誰もが声を失っていた。
「ほら、な」
ダークリンクはクレシスの手を取ると、手のひらを自分の胸に押し付けた。どくん、どくんと心臓の鼓動する音が伝わってくる。それに、これは。
「――温かいだろ?」
ずるりと剣が抜き取られると、傷口から鮮血がどろどろと溢れ出してきた。走る激痛は留まることを知らず、遂にクレシスはその場に両膝を付く。大丈夫だ、大丈夫だからと心の中で言い聞かせながら、傷口を手で塞いで顔を歪める。
くそ、目の前が霞んできた。生温くて、ぬるぬるしていて気持ち悪――
「そういうことだよ」
追い討ちをかけるようにして、ダークリンクはクレシスの胸に剣を突き刺した。引き抜くと同時に、勢いよく噴き出す鮮血。
ぐら、と体が揺らいで、床に力無く横たわった。傷口から溢れ出した血が、じわりじわりと床に広がっていく。それが頬に浸って、気持ち悪い。その内、頭がぼうっとしてくると、聴覚が働かなくなった。自分の呼吸も……心臓の、音……は……
――クレシスの意識は、そこでぷつんと途切れた。
「リンク、お前がしようとしていることは」
ダークリンクはゆっくりと顔を向けて、にやり。
「人殺しなんだよ」
リンクは大きく目を開いた。
「っあはは! だって、そうだろ?」
ダークリンクは血溜まりを踏みつける。
「同じ人間だからと殺しを惜しむだけで、こうも犠牲が出るんだ。そんなの、」
そう言って剣を軽く振るうと、床に血が飛び散った。
「――殺しも同然だろうが」